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 食品加工の仕事をしてた頃、私より後から入った人で、隣県から電車で毎日通勤してくる人がいた。仮に名前をAさんとしよう。

 最寄の駅から職場までは10分もかからないが、彼女の家の最寄駅からここの駅は4駅目。ほとんどの人が近辺から通っているという環境で、勤務時間が短い割に通勤が遠いAさんを少し気の毒に思っていた。

 

 休憩時、たまたま流れで通勤手段の話になり、電車で来てるAさんが一番大変かなと言ったところ、同席していた人事関係の人が「え?あの人近所から自転車で来てるやん」と言った。言ったあと「しまった」という顔になったのは、いちおう目に見えてわかることでも守秘義務があるからだ。

 

 どこから来てるという話はこちらから聞きださなくても、彼女自身が問わず語りにいろんな人に話していたが、それも聞いた人によって場所が全部違っていた。私が聞いたのは隣県のN市だったし、別の人が聞いたのはH区だった。

 同じように問わず語りに話された家族構成も、聞いた人によって全然違っていた。

 

 子供の頃に、すぐばれる嘘をつく同級生がいたが、大人になってからそういう人に遭遇するのは珍しい(私の場合ざっと思い出して2人くらいか)。

 同級生の場合はまだ自慢したい虚勢を張りたいという理由が明確だったから、あほちゃうか、と思うだけでそこまで薄気味悪くはなかった。しかしこの件はさっぱり動機がわからない。何とも得体のしれない怖さがあった。

 

 彼女は結局、上記の件とは無関係に辞めて行った。

 某名門国立大学を出ていると別れ際に話していたが、今となってはそれもどこまで本当だったのか。