ユニクロ

 

 中学生や高校生の頃、自分が着る服をここから選べと親に連れてゆかれるのは決まって近所のスーパーで、そしてその売り場を20分や30分ほど彷徨ってはみるものの、ハンガーに掛けられて並んだ服を幾ら眺めてもめくっても一向に決まらない。

 大体、そういう場所に連れてゆかれる頃にはかなり服事情が逼迫していて、何とかしてどれかを選ばないと明日着てゆく服にも困るというようなコーナーに追い詰められているので、仕方なく消極的選択を行う。

 そんな風に選ばれた特に愛着もない服がいくつか、小さなストレージに吊られて並んだり畳んで積まれたりしていた。それが私の「服」の原風景だったりする。

 

 去年の夏の終わりに、急にはおり物が足りなくなり、シンプルな黒のカーディガンでいいから何とか一枚調達できないものかと近所のスーパーの服売り場に飛び込んだ時に、中高生だった頃の自分が感じていたあの「途方に暮れる感じ」を思い出した。

 何しろ手持ちの服に合わせ辛いものばかりが目につく。

 他の服と合わせるときに少し邪魔になってしまったり、ひねりや工夫が必要になってしまう過剰な柄や余分なポイント、または無地であっても微妙な色だしの数々。

 ああ、だからあの頃何分粘っても選べなかったんだ。今ならよくわかる。

 

 ユニクロの服を口に出してほめる人はあまりいないと思うので、あえてここでほめてみる。

 何が助かるかって、単刀直入に言うとシンプルな無地の服の多さだ。

 私の場合柄は一つあればいい。子供の頃服に選択の余地がないが為に、狙ってもないチェックオンチェックや柄オン柄という冗談みたいな組み合わせを嫌ほど体験しているので余計に、大人になって自分の甲斐性で服を着られるようになったからには自分の中で決めたセオリー通りに服を組み合わせて着ていたい、という志向が強いのだ。

 

 昨日近所に開店した店を覗いて、仕事場(私服可・カジュアル可)に着てゆくブラックとワンウォッシュのデニムを一枚ずつ買った。これでも6000円程度で収まってしまうのだ。しかも、数年前の同じブツと比べてみると、シルエットも履き心地もあきらかに進化している。バブルの時代をひっそり耐え抜いた人間からすると信じられない値付け&クオリティだ。

 (ユニクロの話になると、おたくはあの経営方針についてはどう思うの社長の人となりはどうなの、という話に持って行かれることがないではないんだけど、まあそういう話はいつかまた)

 

 誕生日も近いし、この一年の自分をねぎらうつもりで、かなりくたびれていた靴も二足新調した。一足の値段はささやかでも、二足同時とは私にしては思い切った散財だ。コンバースのジャック・パーセルとVANSのスリッポン。どちらも黒。

 スカートにスリッポンを合わせるのが好きなので、久しぶりに購入することにしたが、サイズがないので取り寄せを頼んだ。

 夏をこれで過ごせる。