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川平湾の猫

 

 川平湾のグラスボート乗り場で船を待っていたら、浜の奥にある木陰のベンチで黒猫が丹念に毛づくろいをしていた。

 

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 耳には避妊手術を済ませた印である切れ込みがある。野良ではなく大事にしてもらっているようだ。近寄っても逃げない。手を伸ばそうとすると、植え込みの奥から片目を怪我した猫がやってきて座り込んだ。これが黒いの以上に人懐っこくて、小さな子供が撫で回しても、気持ちよさげにじっとしていた。

 

 家に戻って次男にこの話をすると、その黒い猫なら自分も二年前に撫で回したことがあると言う。修学旅行でグラスボートに乗った時、人数が多い加減で待ち時間が長く、退屈なので猫の相手をしていたのだそうだ。

 奇しくも親子で同じ猫の相手をしていたことになる。ちょっと笑った。

 

 川平湾は美しい白砂の浜を持つ。その浜に乗り上げるような形でグラスボート船は着岸する。

 

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 台風が沖にあって海面は時化気味だったが、船頭は巧みに船を操りながら見所を巡る。

 ちょうど訪れた時間は湾に川の水が流れ込むタイミングで、海底が透きとおって見えるスポットも限られる。そういう興味深い潮目の解説も交えながら船は進むので、すぐ乗り物酔いする私も戦々恐々乗り込んだ割には最後まで酔わずに済んだ。

 

 下船後は強風に煽られながら浜を散歩し、浜の傍にある御嶽を覗いたりしたが、立ち入り禁止の注意書きを見て写真も撮らずに退散した。

 御嶽地元の人たちの信仰の場だ。形だけなら本土の神社と同じ形の鳥居が立ってはいるが、性質はまったく違うものだということを禁足の注意書きで理解した。

 (ちなみに、御嶽の鳥居は戦前に国から神道施設化の一環として課せられたもので、沖縄本島では終戦後に鳥居を撤去している所も多いそうだ)

 

 喉が渇いたのでアイスクリームを買い、食べ終えて売店の脇にあった川平観音堂にお参りをした。とても素朴な感じのするお堂で、本土のそれとは雰囲気が違う。中に入ると、アジアのお寺にある仏画のような美しい観音様の絵が出迎えてくれる。

 石垣島に来て以来ずっと思っていたが、ここは仏教の匂いがとても希薄なのだ。

 なので久しぶりに知己に会ったような気持ちになったが、知己本人よりその近い親戚に逢ったような不思議な気分だった。