読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

時給743円のロイヤルティ

 

 勤めている現職場のことを詳しく書くのは気が引けるので手短に済ますが、パート従業員にロイヤルティを求めることがないことに当初驚いた。ロイヤルティを示さねばならない機会がわざわざ設けられていない、といった方が的確か。

 

 以前の勤め先では、年に何度か回ってくる公式または非公式の従業員購入、同業他社で買い物をしてはいけない不文律とその禁を破った人への陰口、またこれも年に何度かある、自店で一定金額以上の買い物をしたレシートを提出して累積額を競うイベント、ざっと思い出すだけでもこれだけある。

 

 従業員購入というのは公式なものではボジョレーだクリスマスケーキだひなまつりだと季節ごとに呼びかけがあり、その合間には自店の各部署がそれぞれ売りたいものを用意して店中の従業員に個別注文を取って歩く非公式なものがある。内容は高級新巻鮭やいくらの詰め合わせだったり、和牛のすき焼き肉だったりと単価の高い結構な高級路線だ。

 

 日頃から顔を突き合わせている間柄の人間から購入をお願いされるとなかなか断れないのが人の常で、大概の人が何かの品を購入していた。

 私も2~3度は付き合ったが、頻繁に回ってくるそれらに財布の紐を緩めていると何のために働きに来てるのか本末転倒なので、辞めるまでの2~3年では気まずいのを承知で断っていた。

 

 イベントについてはもう疑問符しかない。

 というのは各部署のレシートの累積額が棒グラフで壁に張り出され、同時に、まだ提出のない人間の名前も見せしめのように貼り出されるのだ(ただこれは当時の管理職個人の、独特の嗜好が反映されたやり方である可能性はある)。

 

 スローガンとして「ナントカ作戦!金額達成までみんなでガンバロー!オー!」みたいな文言が掲げてあって、その物言いに私はひどく違和感があった。

 作戦と銘打っているが要するに上から降ってきた数字を達成するために「客」としての従業員の購買力にお願いをする身も蓋もない施策なんだから、そこは他人事みたいに「みんなでガンバロー!」じゃなくて平身低頭の「ご協力をお願いします」だろうよ、と常々思ったものだった。

 

 今の勤め先は業種が微妙に違うこともあってか、自店の物を買えと言われたことがない。当初はいったい何を買わされるかと1年ほどは身構えていたが、ありがたいことに?とうとう何もなかった。

 それだけではなく、パート従業員を集めた内容の薄いミーティングが頻繁に行われるようなこともないし、その手の集まりで「金額に不満を言わず働きましょう。雇ってもらっていることに感謝を忘れてはいけない」などと心構えを諭されることもない。

 ただ働いて帰るという非常にシンプルな日常を今は送っている。

 

 その会社の風土もあるが、思い出してみればその頃は経費節減を理由に部署の社員が使うPHSが取り上げられたり什器が十分になかったりと、売り上げの数字が下がっている影響がそこらここらに現れていて、それらも締め付けの要因にはあったかもしれない。

 左前になって余裕が失われると人の大らかさも失われるのなら、自分なりに努力して数字を上げていたいものだと思う。

 

 あとパワハラを生みやすい社内構造について書きたかったが、時間が無くなったのでまた後日。