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ポケモン百景・番外

 

 「だからさー、絶対ダメだってこんなのはー」

 ポケモンが配信される前々日のことだ。海外でポケモンがらみの事故やトラブル続出というニュースを耳にして、同僚の女性が愚痴る。

 彼女の息子さんは電車で隣り合わせた人のウォークマンのシャカシャカ音が我慢ならず、ヘッドフォンを引っこ抜いて叱りつけたことがあるそうだ。無作法な人が増えたらあいつまた何をやらかすか、と心配している風だが、息子の持論に対して否定的というわけでもなく心情的には同調しているのは、ほかの愚痴を聞いていてわかる。

 

 スマホを持たないのは、デメリットのほうが多いからだと言う。

 「便利なんだろうけどね。でも今の人はスマホに振り回されすぎ!」

 たとえば?

 「目の前の人を放っといてスマホに没頭するとか。電車に乗ってもみんなスマホいじってるって気味悪い。目の前の人間と話したり向き合うべきだと思うの」

 

 それは今に始まったことじゃない。以前からもよく言われてきたことだ。

 「もっと人と触れ合うべき、しゃべるべき」と言われる。人としゃべる=善 スマホでコミュニケーションを取る=悪 という定説に基づいて話をする人は必ず一定層いる。彼ら彼女らは覆しがたい事実として、確信をもって人に説く。

 

 かつても、ワープロで作った年賀状には心がこもっていないと言われてきた。音漏れをさせなくても電車の中で音楽を聴いていること自体が不愉快と言われる時代もあった。パソコンも批判の対象だったし、携帯が普及し始めた時も、こちらが何も言わないうちからなぜ自分は携帯を持たないかを突っかかり気味に説いてくる人がいた。

 

 「この前もさー、ファミレスに入ったら同年代くらいの女の人が4~5人くらい?誰もしゃべらずにずっとスマホいじってるのよ。しゃべらへんのやったら一緒にいる意味ないやん。さっさと家に帰ったらいいのに」

 と彼女が言うのを聞いて背中に薄く冷や汗がにじむ感触があった。

 

 ingressでは仲間を募ってFFと呼ばれる補給会を催すことがある。

 FFとはFlash Firmingの頭文字をとったもので、高レベルポータルを作れる人数を集めて一気に補給を行うのだが、プレーヤーは男性が多く勤め人も多い都合で夜に行われることが多い。

 で、夜に出にくい女性AGで昼間にやりまひょか~、という計画が先日あったのだ。私は仕事があって欠席したが、なんでも座席から数個のポータルがレンジするファミレスがあるのでケーキセットでも食べながらゆるゆるやりましょうか、という話だった。

 数人で黙々とスマホいじってたって言うから、高い確率で私の知り合いくさい。

 この前も大きめの公園で集まってたら「何アレ」と指をさされたさ。

 世間の風はAGに冷たい。

 ただ私たちがどうしてこのある意味マイナーなゲームを長く続けているか考えてみたが、やはりスキャナー(ゲームの画面)の向こうに人がいるから、と言うことに尽きる。

 電話をする人が機械としゃべっているのではなく受話器の向こうの人としゃべっているように、LINEを使う人がアプリとやり取りしているのではなくトーク画面を通して人とコミュニケーションを行っているように、私たちもスマホを通じて人間と対戦や協力をしているのだ。

 

 そういやポケモンの余波で、今まで集会に使ってた公園などでもやりにくくなる場所が出てくるかも知れない、と同じチームのAGが心配していた。取りこし苦労に終わればいいけど。