暑い日に


 昼休み。 いつまでも踏切が開かないので、いやな感じだなあと思っていたら、案の定だった。
 駅のホームから飛び込んだ人がいて、電車が止まってしまっていた。

 直後、救急車や消防車がサイレンを鳴らして大集結していたらしいが、私は牛丼屋の店の奥の席で、冷やしうどんの上の温泉卵をどのタイミングで潰すかという一件に鬼のように集中していたので、まったく気づかなかった。

 うちの最寄り駅は自殺の名所だ。
 急行や特急があまり速度を落とさずホームの前を通過するからだ。
 昼休みが終わり 事務所に帰ると、ホームにかけられたブルーシートの範囲の広さを、通りすがりに目にした人が話題にしていた。
直接関係のない人であっても、そういう状況を聞くとある程度は凹む。

 死にたいという気持ちは人間の本能や本然からは遥かにかけ離れている。
 本人が本心から死にたがったのではなく、病気や状況に殺されたのだと私は捉えてしまう。だから、迷惑だとか一人でひっそり死ねとか、あまり言いたくないんだな。