ニッポニア・ニッポン

 

 私の古い知人には、さだまさしを好む人が多くいる。

 私の方はというと、大晦日から元旦の朝にかけての恒例行事となっている彼のあの番組を毎年飽きずに見る、という形のかかわりしかなくなってしまっているが、学生の頃に聞いた「前夜(桃花鳥(ニッポニア・ニッポン))」という歌の歌詞なら、今もそらんじることができる。

 

 「馬鹿だね そんな風に 変わってゆく姿こそ 

  それこそこの国なのよ 

  さもなきゃ初めから ニッポンなんてなかったのよ」

 という強烈な一節があるからだ。

 

 作った本人は、もしかしたらシニカルな気持ちで書いたのかもしれないこの一節を私は、文化という面では古来から非常に貪欲で、あらゆる外来のものを咀嚼し我がものとしてきたこの国の逞しさへのリスペクトとして聞いた。

 

 「日本はなくなって、その代わりに、無機質な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目のない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう。」

 という言葉を遺して亡くなった三島由紀夫への返歌であるようにも聞こえるのだが、さて、どうだろうか。